進化したAI自動翻訳の運用を知ることは

『自動翻訳大全 : 終わらない英語の仕事が5分で片づく超英語術』

坂西優, 山田優 著
三才ブックス(2020年)
ビジネス実務学科 冨吉 光則 准教授 推薦図書)


 

 「自動翻訳」とは、「機械が自動的にテキストを分析してユーザーの指定した言語に翻訳を実行する」、いわば人が行う言語コミュニケーションにおける翻訳を瞬時に実現するものである。その機能はウェブサーバに翻訳エンジンを構築し、対となる言語の単語と構文(文法)をルール化してプログラムし、入力したテキストを機械的に翻訳する技術だ。

 その歴史は古く、パターン化された特定のビジネスシーンにおいては多くの成果を残してきたものの、長らく翻訳の精度を欠点として指摘され、汎用性の面でビジネス社会では根付いてはいなかった。開発と運用に関わってきた多くの技術者・エディター(辞書作成の専門家)の努力の一線を突破したのは、グーグルにより2016年11月にリリースされた人工知能を活用したニューラル・マシーン・トランスレーション(ニューラル機械翻訳、NMT)の登場からである。SNSが世界中で爆発的に利用された結果、ウェブ上に溢れた膨大なテキスト(単語・文章)を、ウェブ検索のクローリング技術により、AI(人工知能)が人間が訳すような流暢さをもって翻訳することに成功したのだ。従来のAIにおける機械学習はディープラーニング(深層学習)に進化し、AI自身が自動的にテキストデータを食って(取り込んで)成長する(翻訳のクオリティを改善する)機能を備えた画期的なウェブテクノロジーである。さらにAIによってテキストから音声に変換することも実現し、ついに翻訳デバイス(ツール)の実用化、よく知られたポケトークやヤラクスティック等の翻訳サポート製品・翻訳アプリの社会実装化へと進んだ。

 本書では、基本となるテキストからテキストに翻訳する際のコツやクセ、AIが精度の高い翻訳を出力するための原文の記述方法のノウハウを丁寧に開示している。著者のひとりである坂西優氏は自ら立ち上げた事業会社を通じ、言葉の壁をなくすことに執念を燃やし、かつて翻訳エンジンの開発者だけが知り得た情報を本書にてオープンにし、AI機械翻訳の結果そのものの完成度をさらに高めたいとした意欲が溢れている。専門家でありながら高度なテクニックには踏み込まず、自動翻訳ユーザーのすそ野を広げること、自動翻訳を運用して外国語翻訳を誰もが自由に使いこなすことを目指している。外国語を使った業務や作業を推進するためのバイブルであり、これからの時代にマッチする1冊として、是非学生の皆さんも手に取っていただきたい。

 

2023年3月
ビジネス実務学科 准教授 冨吉 光則

一般図書
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