数学から学ぶ問題解決の方法

いかにして問題をとくか』(第11版)

ジョージ・ポリア 著
柿内 賢信 訳
丸善出版(1975年)
子ども発達学科 森田 大輔 専任講師 推薦図書)


 

 今回おすすめするのは、ジョージ・ポリアの『いかにして問題をとくか』です。ポリアは数学者としてその生涯を過ごしましたが、後年では問題解決の方法やその教授・学習について世に広めました。本書は、ポリアが問題解決の方法を定式化した最初の書籍となります。そして、そこでポリアは問題解決の方法として、次の4つのステップを提唱しました。

  • 問題を理解する
    未知のものは何か、与えられているデータは何か、条件の各部を分離し書きあらわせ。
  • 計画をたてる
    与えられた問題が解けなかったら、既に解いたことのある易しくて似た問題を思い出せ。条件の一部を残し他を捨てれば未知のものが見えてくる。
  • 計画を実行する
    解答の計画を実行するときに、各段階を検討せよ。その段階が正しいことをはっきりとみとめられるか。
  • ふり返ってみる
    得られた答えを検討する。結果をちがった仕方で導くことができるか。他の問題にその結果や方法を応用することが出来るか。

 特に、ポリアが着目したのはヒューリスティックス(発見的手法)と呼ばれるものです。学生の皆さんからすると、数学というと「方程式の解を求めよ」や「〇〇を証明せよ」と問題に書かれているから、解いたり証明したりするというイメージがあるかもしれません。その際、初めて解くような問題であった場合、皆さんはどのようにアプローチするでしょうか。「教わっていないから、自分にはできない」と投げ出してしまう方もいるかもしれませんが、ポリアはそのような場面に直面した際のヒントを提示してくれています。「求めるべきものは何か」「何を証明したらよいのか」を理解し、計画を立てる場面で似たような問題を想起したり、または色々と試行錯誤する中で何かパターンを見出したりするかもしれません。上記はあくまで一例に過ぎませんが、ポリアはそれらをヒューリスティックスと呼び、その重要性を主張しました。

 原著が出てから9年後の1954年に、『いかにして問題をとくか』の日本語訳が丸善出版から刊行されました。そこから、多くの日本人にも読まれることとなりましたが、その影響は数学だけでなく、哲学や教育学にも大きな影響を与えました。私が専門としている算数・数学教育ではその影響が特に強く、授業の中で問題解決を実現することが重要視されています。また、近年では、企業内の研修に『いかにして問題をとくか』が用いられるようになってきています。それは、数学のみならず、いかにして問題をとくか』に通底しているアイデアが、日常生活やビジネスなどにも広く応用されていることの証左と見ることができるでしょう。

 埼玉学園大学や川口短期大学には数学系の学科はなく、また数学の授業も決して多いとは言えません。しかし、問題を発見・解決することは誰しもが人生で直面する出来事です。人生をよりよく生きるためのヒントとして、本書を読まれることをおすすめいたします。

 

 

2025年6月
子ども発達学科 専任講師 森田 大輔

一般図書
[請求記号:410.7/P]

 

 

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