人と違うって面白い?面白い!

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

伊藤亜紗 著
光文社2015年)
子ども発達学科 石橋 優美 講師 推薦図書)


 

 あなたの背中には目があるだろうか?おそらく、「ない」という人がほとんどだろう。本当に目があったら「なんて珍しい人なんだ!!」と言われるに違いない。

 あなたは、歩いていてワゴン車のサイドミラーにぶつかったことがあるだろうか。おそらく、「ない」という人がほとんどだろう。だが、目の見えない人にとっては珍しいことではないかもしれない。少なくとも、私が、とある駅で出会った目の見えない人にとってはよくあることのようだ。

 私たちの多くは、背中に目がない。しかし、背中に目があるのが当たり前ならば、背中に目がない人の方が珍しい存在になるだろう。すべての目が見えないのが当たり前ならば、ワゴン車のサイドミラーにぶつからない人の方が珍しい存在かもしれない。ある人にとっての世界で「当たり前」なことが別な人にとっての世界では「当たり前」ではないかもしれない。そんなことに気づかせてくれるのが伊藤亜紗(著)『目の見えない人は世界をどう見ているのか』と、同じ著者が絵本作家(ヨシタケシンスケ)と共同でつくった絵本『みえるとかみえないとか』である。

 著者の伊藤亜紗は、そんな世界の「違い」を「面白がる」ことが必要なのではないかと言う。「違い」があるから「大変そう」「かわいそう」というのは、勝手な思い込みかもしれないのだ。むしろ、そんな違った感じ方もあるんだと面白がってはどうか、と言う。

 また、私たちは、人と自分との「わかりやすい違い」を見つけると、「自分とは違う人」「よくわからない人」と決めつけてしまいがちだが、実際に触れ合ってみると、むしろ「同じところ」の方が多いことに気づくこともある。

 障害者支援施設に実習に行く学生が、実習前には「不安だ」「利用者の方とどう関わったらいいかわからない」と言っていたのが、実習から戻ってくると、「アニメとか好きな芸能人の話で盛り上がりました」「利用者の方も自分たちと同じでした」と言う。

 自分の「当たり前」が他の人の「当たり前」でないかもしれないこと、でもその「当たり前」の違いが「おかしい」「かわいそう」ではなく、「興味深い」「面白い」ことかもしれないと考えてみてほしい。

 

2022年10月
子ども発達学科 専任講師 石橋 優美

一般図書
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