あなたの教養力、足りてますか?

『おとなの教養 : 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?』

池上彰 編
NHK出版(2014年)


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あなたは“旅”はお好きですか? 私は好きです。歴史ある場所、最先端の場所を訪れ、その土地の過去や未来について、さらには自分の生き方までに思いを巡らせるのが楽しいのです。そんな旅をより面白くするために、その土地や人々の歴史に関する知識、すなわち“教養”をもっと身に付けたいと常々感じています。

近頃「日本人には教養が不足してきた」という声をよく耳にするようになりました。昔に比べて教養は自然に身に付かなくなってきたようです。それは、すぐには「役に立たない(ように感じる)」教養・基礎学よりも、すぐに「役に立ち」お金を生む応用・専門力ばかりを求める声が高まったからでしょう。ただし、応用・専門力は、教養・基礎力を十分に備えて初めて発揮できることです。土台となる教養の不足への危機感からか、学問の基本である“リベラルアーツ”の重要性が再認識され、教養を高める取り組みを進めねばという提言も増えてきたように思います。

科学技術の発展により、私たちはアーカイブされた多様な情報(=先人からの知恵)を容易に検索できるようになりました。多くのことを記憶しておくような教養・基礎力は以前より必要とされなくなってきました。しかし、何か情報を検索する際には必ず“キーワード”が尋ねられますよね。良い情報を引き出すキーワードの多くは、教養・基礎力を身につける過程の中でこそ得られるものだったりします。教養が自然に身に付かなくなった今、自らが「教養を学ぼう!身に付けよう!」と積極的に動く必要がありそうです。

大学で学んでいる皆さんの多くは、近い将来のことが気になり、ついつい専門知識に価値を置きがちになります。可能ならば、人間力の土台となる“教養”の価値にも目を向けて学びを進めて頂きたくて、本書を紹介することにしました。

本書は現代日本に関する教養の入門書の1つです。時事を踏まえながら教養を学ぶ意義や、知識の活かし方が丁寧に説明されています。出版は10年前であるため、紹介されている事例は古く感じるかもしれません。しかし現在も、同様の困難な問題に直面していることには変わりなく、身近な時事に置き換えて読み進め、考えを巡らすにはとても良い材料になると思います。

皆さんそれぞれの学びの目的を、今よりもう少し広く、今よりもう少し先の未来を見据えて再確認していただくことで、学生生活がますます活気付くことを期待しています。


2021年12月
心理学科 准教授 米村朋子

一般図書
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