生命の根幹をなすデジタルの仕組み

『生命はデジタルでできている : 情報から見た新しい生命像』

田口善弘 著
講談社(2020年)


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DNAとかRNAという言葉を今までに耳にしたことがない人はほとんどいないと思います。高校時代に生物を勉強したことのある人は当然のように知っているでしょう。また、新型コロナウイルスに関するメディアの報道でも「人の細胞のDNA」とか、「新型コロナウイルスはRNAウイルスである」とか、「mRNA(メッセンジャーRNA)を使ったワクチン」であるとか、頻繁にこれらの言葉が出てきます。

では生命の根本に関わるDNAやRNAに関して、現在どこまで理解できているのだろうと、関心を持って見てみますと、2000年以降驚くほどの進展を見せているとこの本の中に書かれています。「いま、生物学の分野で静かな革命が進行しつつある」という表現まで使われています。

DNAとはヌクレオチドと呼ばれる物質が繋がってできた鎖が2本向かい合ってくっつき、ねじれながら出来上がった2重らせんという構造になっているのですが、そこに、人やその他の生命をどのように作り上げ維持するかという情報が書き込まれています。いわゆる遺伝情報はDNAの中に書き込まれています。そして、現在解明されつつあるのが、DNAには、遺伝情報部分(タンパク質製造に関するデジタルデータ部分)と遺伝情報をどう発現させるかをコントロールするプログラム部分があるということです。DNAはまるでハードディスクかUSBメモリのようになっています。またRNAとはプログラム実行を担うヌクレオチドの1本鎖です。

DNAやRNAは私たちの体のすべての細胞に入っており、このデジタルの仕組みがあるため体を維持でき、子孫を残せます。生命と呼ばれるものはほぼ全てこの仕組みを持ちます。

この本は、バイオインフォマティクスと呼ばれるデータサイエンスの一分野の専門家による本であり、DNA、RNA、タンパク質、代謝物、それらを統合してみる見方の5つの章からなっています。かずさDNA研究所がネットで提供している「生命の設計図 DNAってなに?」などのようなカラー図解を見ながら読むととても面白いと思います。

この本には書かれていませんが、「ミオシン 歩く」でネット検索してみてください。逆V字型のタンパク質が2本脚で細胞の中の橋を歩いている動画を見つけられると思います。また、「バクテリオファージ」を画像検索してみてください。形状と動作はまるで小惑星探査機です。

生命とはなんと不思議なものでしょう。


2021年8月
経済経営学科 教授 村田嘉弘

一般図書
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