英語を考える1冊

『日本人の英語(岩波新書(新赤版)18)』

マーク・ピーターセン著
岩波書店(1988年)


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英語に関する都市伝説の一つに「日本人は英語の読み書きは得意だが、聞く力が弱く話すことが苦手」というのがある。英作文ができればそれを口に出せば会話になる。英作文ができれば聞く力は当然備わっているはずである。

今回紹介するマーク・ピーターセン著『日本人の英語』(岩波新書)によれば、日本の工業製品は世界一流ではあるが、その商品の英語の説明文を訳せば「彼女は地下鉄を渋谷に乗りました」レベルの英語になっているという。「試験を受ける」を日本人はHe takes the examと訳すが、ネイティブには「彼は試験をとります」と意味不明な文章になってしまうそうだ。「試験を受ける」の一般的な英語はHe sits for an exam.となる。それは日本語と英語の構造的違いからきていると著者は述べている。英語では日本語にはない冠詞(a とthe)と単数と複数が極めて重要な要素となる。アメリカ合衆国を英語ではThe United States of Americaと必ずTheを頭につけなければならないが、日本ではSong for USAになってしまう。Theを意味する日本語は無いので、一つしかないものや、山や川などにはtheをつける程度しか授業では習わなかったが、ネイティブにはこのaとtheが文章全体の意味を象徴することになる。だからaとtheの観念のない日本語を直訳すると意味不明な英語になってしまうのである。

 著者は日本語と英語の「論理」の違いが日本人には理解しがたいことから不思議な英語になってしまうと述べているが、ではこの「論理の違い」をどう克服すればいいのかの解答は述べていない。ここから思うにこの「論理の違い」を理解するには私たちは英語を読み込むしかないと思われる。多読で、自然に英語が出るようにするしか方法がないのである。東京大学のある学長が学会の発表を英語でする機会が多いために、有名な英会話学校の講師を雇い英会話の個人授業を受けたが、まったく役に立たなかったと述べている。結局は英語を読むことが「英語の論理」を理解する唯一の方法であろう。


2021年2月
ビジネス実務学科 教授 宮越雅明

一般図書
[請求記号:835/P/1]

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