チンパンジーとの比較から人間の本質を理解する

若い読者のための第三のチンパンジー : 人間という動物の進化と未来

ジャレド・ダイアモンド著 ; 秋山勝訳
草思社(2017年)


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人間とはいったいどのような動物なのでしょうか。
皆さんはこのことについて考えたことがありますか?チンパンジーにはコモンチンパンジーとボノボの2種類がいると言われていますが、人間とこの2種類のチンパンジーとの間には、構成する遺伝子の98%以上が共有されていることが明らかにされています。つまり人間は、本書のタイトルにもある、コモンチンパンジー、ボノボに続く第三のチンパンジーとも言えることになるのです。
このように遺伝子レベルではごくわずかの違いしかないにもかかわらず、人間は様々な能力を発揮し、実に複雑な行動を可能にし、豊かな生活を獲得してきました。現在、私たち人間である”ヒト“という種は、かつてない規模で地球を支配しています。人間は、経済の仕組みや農業、多様なコミュニケーション、芸術など、様々な工夫をなし遂げてきた一方で、長い戦争時代の過去や、勢いを増す深刻な環境破壊など、決して喜ばしいことばかりではないことにも注視しなければなりません。

 

ジャレド・ダイアモンド博士は、進化生物学者でもありながら、基礎医学における生理学の専門家でもあり、ダイナミックな研究で世界的に著名な研究者です。ジャレド博士を日本に紹介したのはご自身が行動生態学および自然人類学者である長谷川真理子博士と寿一夫妻であり、『人間はどこまでチンパンジーか?人類進化の栄光と翳り(ジャレド・ダイアモンド著、長谷川真理子、寿一共訳、新曜社)』を、1993年に出版されました。本書『若い読者のための第三のチンパンジー:人間という動物の進化と未来』は、特に若い読者向けに書かれたものであり、ジャレド博士のユニークで鋭い視点から人間の特徴と行動に関する検証がなされたものであり、博士から現代の若者へのメッセージが沢山込められています

 

大学生という人生の中で最も自由な時間のある期間のうちに、是非、私たち人間はどのような生き物であるのか、真剣に考え、理解を深めてみてください。


2019年9月
経済経営学科 教授 一戸真子

一般図書
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