自分がヤンキーだなんて思わなかった!

『世界が土曜の夜の夢なら』

斎藤環著
角川書店(2012年)


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標題からはわかりにくいけれど、中身はいわゆる「ヤンキー」的心性が本質的にどんな形をしているのかを考察したものだ。だから、「ヤンキーと精神分析」という副題が付いている。

特にこちらの胸に刺さったのは、後半で「教育」が「ヤンキー」という視点から論じられている箇所だ。「気合」と「アゲ」をヤンキー的キーワードとする筆者は、教師を主人公とする日本のテレビドラマを取り上げて、海外の教師物には必ず認められる「自由で自立した個人であるためには、何らかの知的スキルの向上が不可欠であるという信念ないし常識」が抜け落ちていると述べる(p.149)。

この指摘には参りましたね。自分がヤンキー的気質を濃厚に持っているとは思っていなかったけれど、授業中に「ムズカシイけど頑張ろう」とか、「絶対できるっ」とか、学生の気合に訴えかけて、気分を昂揚させるようなアジテーションをしょっちゅう繰り出しているもんなぁ。授業してる私は紛うかたなきヤンキーなのでありました。

教室の体温が低いままで90分の授業を維持するのは難しい。学生を授業に巻き込んで否でも応でも参加してもらい、彼我のエネルギーを教室に渦巻かせてその勢いで90分を走らないと、授業の内容も伝わっていかない(授業は「知識」を受け渡すだけの場所ではないと考えている稿者は、すでにヤンキー的素質が充分なのかも)。そしてそのためには、教師の方も「気合い入れてアゲる」ことがどうしても必要なのである。

しかし、この本を読んで深く反省しました。「気合い入れてアゲる」のは、授業をするための前提条件に過ぎないのだと。その先の、「知的スキルを向上させ」、以て、学生一人一人が「自由で自立した個人」に育っていってくれるよう工夫することにこそ、我々はエネルギーを注がなくてはならないのだと、しみじみ自戒した次第。


2013年2月
人間文化学科 教授 中村文

一般図書
[請求記号:367.68/S]

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