己を信じることの大切さ

『ぼくと1ルピーの神様』

ヴィカス・スワラップ著 ; 子安亜弥訳
ランダムハウス講談社(2006年)


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映画「スラムドック$ミリオネア」の原作

フィクションではあるが、殺人、強奪、幼児虐待、売春、宗教対立など、現代インドの抱える現実社会を見事に投影している作品である。

テレビのクイズ番組で全問正解10億ルピーを手にした少年に待ち受けていた、汚い世界。
警察さえもお金で動くことを知り、すべてを諦めたその時、見ず知らずの女弁護士が現れる。その女弁護士に、自分の潔白を証明するために話し始める少年「ラム」の人生の物語。

孤児院で育ち、学校にも通っていない少年が、なぜ全問正解という偉業を成し遂げたのか。
答えはすべて、少年の壮絶な人生そのものにあった。
階級意識が根付いた人々による偏見や差別が、社会の底辺で生活する人を、”人”として認めていないことも浮き彫りにしていく。

孤児院から救出された少年と友人。
救出されたのではなく、マフィアにより、腕や足を切断され、物乞いの道具にさせられると知る。

少年が、見ず知らずの占い師からもらった幸運の1ルピー。
最後には、自らを信じて進むことの大切さを物語ってくれる。
そして、最後の怒涛の種明かしが、爽快感を与えてくれる。
そもそも、なぜ彼はクイズ番組に出たのか…

混沌とした社会の中で、自分の決断を信じ、人を愛することを忘れなかった少年に、私たちが教わることは何か…ぜひ、本書を読んで、それぞれの“何か”を感じてもらいたい。


2012年7月
情報メディアセンター K.S

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視聴覚資料
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