社会で必要とされている「力」とは―充実した人生に

『35歳の教科書 : 今から始める戦略的人生計画』

藤原和博著
幻冬舎(2009年)


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まだまだ先の35歳をテーマにした本を大学生・短大生にすすめるの?と疑問におもう人が大半だとおもいます。でもみなさんにすすめてみようかなとおもった理由は単純に、筆者の現代日本に対する見方とその場合において必要とされる能力に対する考え方が面白かったからです。2箇所内容を紹介してみましょうか。

強引な要約ですが一つ目はつぎの通りです(pp.102-107.)。
日本は成長社会から成熟社会に移行している。以前の成長社会では「正解」を導きだす力(情報処理力)が重視された。もちろん以前から日常的に突きつけられる問題の多くには正解がなかったが、成熟社会ではますます「正解」のない問題が増える。そのため、成熟社会では「納得解」を導きだす力(情報編集力)が重視されるようになる。ここで「納得解」とは、自分が納得でき、かつ関わる他人を納得させられる解である。とはいえ、いまだに「正解」を求める傾向がある。たとえば、「本当の自分」、「理想の職場」、「自分にぴったりの結婚相手」これらに正解があると信じてしまい追い求めてしまう。これらは幻想で「正解」は存在しないのだから「納得解」を見つけだすことに力を入れるべきである。

二つ目はつぎの通りです(pp.116-118.)。
現代社会は霧のかかったゴルフコースであり、しかも打った瞬間にグリーン自体の位置が変わってしまうかもしれないというおまけまで付いているようなところである。このようなところではとりあえず一打目を打ってみるしかないのだが、多くの人はクラブを慎重に選んだり、風向きを読んだりするばかりで一向に打ち出そうとしない。確かに以前の成長社会では、時間をかけてでも少ない打数で入れたほうが勝ちというルールだったが、今の成熟社会ではとにかく打ったほうが勝ちであり、何回打ってもいいから早くカップインしたほうが勝ちというルールに変わってしまった。今の時代は次々に打って試行錯誤しながらノウハウを蓄積したほうが勝ちである。

一つ目のほうの「納得解」を見つけるというのは文系大学のゼミでやっているようなことではないでしょうか。もし一つ目のことが本当であるならば、ゼミを一生懸命やっておくことが将来のためになるかもしれないですね。
二つ目の方の「とにかく打ったほうが勝ち」というのは就活に通じるような感じではないでしょうか。もし二つ目のことが本当であるならば、就活でその姿勢を練習しておくことが将来のためになるかもしれないですね。

ともあれ、大学・短大時代のノウハウが35歳頃の思考の基礎になるかもしれないと考えつつこの本を読んでみてくれると幸いです。


2009年12月
ビジネス実務学科 准教授 稲場健吾

一般図書
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