文学作品の息吹に触れたいあなたへ

『近代文学の至宝 : 永遠のいのちを刻む』

日本近代文学館(2007年)


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近代文学研究の醍醐味の一つは、研究の対象の資料を実際に見たり触れたりできるという点にあるように思います。その気になって、しかるべき手続きを踏めば、誰でも夏目漱石の肉筆原稿を見ることができるのですから。

この本は、2007年に日本近代文学館開館40周年と成田分館開館を記念して行われた展覧会の図録ですが、その時展示された数多くの資料の写真版が収録されています。樋口一葉「たけくらべ」、小林多喜二「蟹工船」、太宰治「人間失格」といった、一度は聞いたことのある作家や作品の肉筆原稿などが写真版で収録されており、小さな写真とはいえ、創作現場の息づかい、作品に潜む作家の思いが直に伝わってくるようです。

ただ、こうした原稿は自然と集まってきたわけではありません。出品目録や巻末の「記録・資料」に記された多くの関係者の名前を見れば分るように、様々な人々の協力、そして不思議な縁があって、少しずつ資料が集積されてきたのです。
一つの資料には、それを書き、読み、保存し、伝えてきた様々な人々の記憶が凝縮されています。文学を読むということは、一面では人々のそうした「記憶」を解きほぐすことでもあります。そんなことを改めて気付かせてくれる一冊です。


2009年7月
人間文化学科 専任講師 掛野 剛史

一般図書
[請求記号: 910.26/K]

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