『仏像のひみつ』『続 仏像のひみつ』
山本勉著 ; 川口澄子イラスト
朝日出版社(2006年、2008年)
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気になるけれど、近づきにくい …
と言っても、「カッコイイあの人」のことではありません。
ここで話題になっているのは、仏 像 です。
実は今、仏像はひそかな(というには華々しすぎる)ブームなんです。
上野にある東京国立博物館で先ほど開かれた「阿修羅展」でも、たくさんの人が仏像を取り巻いて、しばらく見入っていました。
仏像を見ていると、何だか気持が静かになってきたり、いつもとは違う時間が流れているような気がしたりした経験は、きっと誰もがお持ちでしょう。
本当は、「仏像を見る」上でいちばん大切なのは、そういう〈 自分の内側 〉に気づくことなのかもしれません。
でも、仏像について少しでも知っていると、知らないでいた「奥深い世界」にもきっと分け入れますよ。
この本は、子供向きに書かれていて、楽しいイラストも満載です。だいいち、説明がとっても解りやすい。
最初のページを開いてみてください。「仏像にもソシキ」があって、「如来・菩薩・明王・天」の順でエライ、なんて書かれています。
何だか仏サマが自分の隣に来て座ってくれているような、身近な存在に思えてきます。
それから、仏像の目をリアルに見せるための驚くべき工夫についても書かれています。
で、完成したその手法をみんなマネしたのかと思いきや、悩んだ末にリアルじゃない元の方法に戻してしまった人もいるのですって。
どうやったら、心の中に宿る〈気高い存在〉とそれを〈おそれうやまう気持〉を表現できるのか、試行錯誤しながら仏像を作っていたのですね。
つまり、この本にかかれているのは、一見「仏像に関する知識」みたいに見えるけれども、実は、「自分を見守る超越的な存在」に近づこうと、人々が一途に考え工夫した長い歴史が語られているわけ。
それを読む私たちもいつの間にか、〈自分〉という個の立場からだけじゃなく、世界の全体や超越的な存在、また仏教と歩んできた長い時間を意識しながら、自分を見つめることになります。
ね、書き方は子供向けだけれど、中身は結構オトナ向けのディープな内容でしょ。
2009年5月
人間文化学科 教授 中村 文
一般図書
[請求記号: 718/Y/1]
一般図書
[請求記号: 718/Y/2]