【タイトル】
『〈重ね〉と〈陰陽〉の日本文化―生命の美学』
(埼玉学園大学研究叢書第23巻)
【著者 柴田 勝二 教授による紹介文】
古代から土着の風土と融合させつつ外来文化を受け入れ、独自の豊かさと多彩さを築いてきた日本文化。その基底にあるものは神道という形を取ることになる自然信仰であり、すべての自然現象の背後に神を見るこの宗教が、一つの存在にもう一つの存在を重ね合わせ、日常的なものに神的なものが潜んでいるという発想をもたらした。『一寸法師』から『名探偵コナン』に至る、卑小に見える人物が実は神のような能力の持ち主であるという二重性を興趣とする物語の系譜はその代表てある。それは隠された生命の顕現でもあるが、本書では文学。演劇のような言語文化と、仏像・絵画・庭園・生け花といった表象文化の両方にわたって、この日本文化を特徴付ける「生命の美学」の諸相を探っている。
〈重ね〉に加えてとくに表象文化において重要な意味をもつのが中国から伝わった陰陽五行の思想である。〈重ね〉も現れるものと隠されるものが重なる点で陰陽の構図をなすが、陰と陽が対をなしつつ、生命の顕現に相当する後者を際立たせることによって、左右非対称の構図が絵画や庭園、生け花などに多く生まれることになった。それは左右対称を重んじる西洋や中国とは異質な構図で、陰陽思想が日本的に消化された結果にほかならない。
【目次】
序 章 基底としての〈重ね〉―日本文化論の諸相
第一章 仏のなかの神―仏教と仏像
第一章 共鳴する自己と他者―詩歌
第三章 隠され、顕れる自己―演劇
第四章 死をはらむ生者―物語と小説
第五章 陰陽の織りなす空間―庭園と生け花
第六章 非対称の均衡―絵画
【書誌情報】
書名:〈重ね〉と〈陰陽〉の日本文化―生命の美学
著者:柴田 勝二(人間学部 人間文化学科 教授)
ISBN:978-4-7879-5520-3
出版社:株式会社 新典社
体裁:A5判 256p
定価:2,000円+税
発行:2025年12月3日

一般図書
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