会社四季報業界地図編集部 編
井上 達彦 監修
東洋経済新報社(2025年)
(経済経営学科 中沢 浩志 教授 推薦図書)
企業経営者は企業価値の最大化を目指します。産み出されるキャッシュフロー(以下、もうけと言い換えます)を拡大すれば企業価値は増大しますが、それはもうかるビジネスモデルを構築できるかどうかによって決まります。要するに、企業がいくら崇高な企業理念をうたっても、もうかるビジネスモデルがなければ存続できません。
本書は、横軸として価値の源泉、縦軸としてもうけの獲得方法とした3×3のマトリックスでビジネスモデルを9つに分類し、多くの有名企業のビジネスモデルに当てはめて分析しています。各企業のビジネスモデルは経済メディアでよく取り上げられますが、個社の断片的な情報であることが多いことが現実です。経営学を学ぶ学生の皆さんが包括的かつ手軽に生きた実際のビジネスモデルを知る絶好の本です。企業のビジネスモデルが単純化され、データに基づき見開き2ページで説明されていることがウリです。
各企業は独自のビジネスモデルで差別化を図っていますが、その多くは9分類から複数のビジネスモデルを組合せており、組合せの仕方が重要になります。優良企業は他社のビジネスモデルを真似することがうまいそうです。ただ意外にも、真似の対象は同業種のライバル社ではなく、一見関係ないような業種が役に立ち、トヨタがスーパーマーケットを参考にして世界に冠たるジャストインタイムのシステムを構築した例を挙げています。イノベーションや社会環境変化によりビジネスモデルは変わらざるを得ないことはつらいところですが、ソニーは20年苦しんで成功例となりました。
本書では、9分類の間の分析もなされています。マトリックスの縦軸としてのもうけの獲得方法については、売り切り、リカーリング、プラットフォーム化と進んでいくほど、もうかることが確認されています。また、売り切りモデルでは他社との連携はもうけを失い、プラットフォームモデルでは連携こそ威力を増します。この2点にピッタシ当てはまる例がGAFAです。
就職時の企業研究の際もビジネスモデルを確認して納得してください。そうすれば、就職後もうまく活躍できるものと確信しております。本書がその一助になるはずです。
2025年12月
経済経営学科 教授 中沢 浩志

一般図書
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