加島 祥造 著
小学館(2015年)
(こども学科 小山内 弘和 教授 推薦図書)
 
 『誤解しないでほしい。「求めない」と言ったって、どうしても人間は「求める存在」なんだ。それはよく承知の上での「求めない」なんだ。』 
 このような「はじめに」から始まる詩集です。
 人は生きていく中で多くのことを「求める存在」です。その中には、“求めなければいけないもの”と、“求めたいもの”があるのではないでしょうか。
 人が“求めなければいけないもの”とは、生きるために必要なものです。生命維持のための食物、水などの栄養や睡眠であり、究極として“生きること”です。それは人として重要な「求めること」である必要がありますし、そうであって欲しいです。
 一方で、“求めたいもの”があります。地位、財産や名声などもその一つです。このように書かれると「そんなに大きな事でなく、小さなことで構わないんだ」と思うかもしれません。でも、ちょっとした成功(失敗したくない思い)や分かって欲しい気持ちなど、小さなものであっても求めたいものがいっぱいあるでしょう。私自身も「何が欲しいですか?」と改めて聞かれるとパッと浮かびませんが、改めて言えないほど多くのことを求めながら生活しているのは確かです。それが日常です。日常であるがゆえに、その現実に気づかない自分がいます。
 その中で、この本を開くと、現実に気づかない自分が「求めたいこと」に縛られているのではないか?という事を感じます。みんな、毎日、自分なりに精一杯生活しています。精一杯生きている中で、自分自身が“求めすぎている”という事に考えが辿りつくことは難しいです。そんな中で、自分自身が本当に窮屈に感じられた時に“ふっと”開くと、「求めない」自分を思い描き、少しだけ自分自身が軽くなる、かな?そんな一冊です。
 
 
2025年10月
こども学科 教授 小山内 弘和

一般図書
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