考えよう!子どもたちの健やかな育ちのためにできることを!!

『からだの“おかしさ”を科学する』

野井真吾著
かもがわ出版(2013年)


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今回紹介する『新版 からだの“おかしさ”を科学する』は子どもの育ちの変容を社会全体の問題として捉え、改善に取り組むことの必要性を教えてくれる本です。

「何もない平坦な場所で転ぶのはなぜだろう?」「転んだときに顔を打つ子が多いのはなぜだろう?」幼稚園で働いていた頃、目の前の子どもたちの姿にこのような疑問を感じていました。そして、『新版 からだのおかしさを科学する』にも取り上げられている“実感”調査で、多くの保育者が同じように「異変」を認識していることを知りました。

子どもの体の異変はすでに1960年代には保育・教育に携わる「子どもの専門家」に実感されていました。そして、1978年に“実感”調査が始まり、その結果を「警告!こどものからだは蝕まれている」という衝撃的なタイトルでNHKが特集番組で取り上げ、話題になりました。それから半世紀の時が過ぎましたが、それらの異変は改善されるどころか、悪化の一途をたどり現在に至っています。加えて、子どもの体の異変は多岐にわたり、近年“実感”として取り上げられる項目も増加しています。また、このような“実感”は専門家だけにとどまらず、子どもを取り巻く多くの人々にも広く認識されるようにもなりました。しかし、改善されぬままになっているのはなぜでしょうか。子どもの体の異変は、社会全体が生みだした問題であることを認識し、向き合い、歯止めをかけ、改善に導かなければならない課題なのです。そのときそのときを精一杯「育とうとする」子どもたちのために、最善の環境を整えることは大人たちの使命であると私は考えています。そのことから幼児の怪我と育ちの変容を追究し、その要因を探ることが私自身の研究テーマにもなっています。このような問題があることをみなさんにも知っていただきたいと考え、今回この本を紹介させていただくことにしました。

プロローグに書かれている「“実感”を手がかりにして、その“実体”を予想し、ある程度の見当をつけたうえで、“体のおかしさ”の“事実”調査に移行する研究手法を取っています。なぜならば、日常的に子どもたちと接している中で感じている“実感”はきっと何かを物語っていると考えるからです。」という筆者の考えに共感します。

保育者を目指すみなさん、将来お父さんお母さんになるみなさん、子どもたちと過ごす中で得る”実感”が物語っていることを敏感に感じ取り、プラスの実感は伸ばし、マイナスの実感は改善することに取り組んでいただきたいと思います。子どもたちが心も体も健やかに育つように、目の前の子どもたちのために今何をするべきかを考えられる大人になってください。

できることを小さな一歩から始めましょう。いつか大きく前進する日が来る、そんな願いを込めて・・・この本を紹介します。


2014年6月
こども学科 専任講師 小川房子

一般図書
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